Fate
 人々は皆、ロズウェルのことを英雄と呼ぶ。世界を救った英雄だ、と崇める。

 しかし、彼らは何も知らないのだ。

 ロズウェルが、自身を大量殺人鬼だと責め続ける毎日を送っていることを。ロズウェルがどれ程までに酷いことをしたのかということを。

 彼らは何も知らないのだ。

 本当に世界を救ったのは、自分ではないある二人であるということを。その二人の、遥か古に結ばれた強く悲しい絆であるということを。

 少しの間だけ、沈黙が続いた後、ロズウェルの気持ちを知ってか知らずか、コウが静かに口を開く。

「歌が聞こえてくるっていうのは、この先なの?」

 視線を、警備兵の後ろから伸びる、遺跡中心部へと続く通路に送った。

 今までロズウェルとコウが歩いてきた狭く暗い通路よりも更に薄暗い。どこか、不気味な雰囲気を漂わせている。

 警備兵が、喉を鳴らしながら、頷く。

 同時に、ロズウェルたちが歩いてきた通路からきた風と、警備兵の背後にある通路からの風がぶつかり合い、激しく唸った。

 四人は、思わず首をすくめた。ロズウェルにいたっては、一瞬、膝を折って座り込んでしまった。

 そんなロズウェルを不思議そうに見つめながら、警備兵が震える声で答える。

「そ、そうです。この先です、いつも決まって」
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