Fate
「十五時くらいか聞こえてくるのよね、歌が」白く細い腕にした時計を確認しながら、コウが途中から警備兵の言葉を継いだ。「もうすぐ、ね」

「は、はい、そうです」もう一人の警備兵が何度も首を縦に振る。

「ねえ」コウが左手をロズウェルの右肩に置いて、おもむろに耳元で囁く。「そういえば貴方、幽霊とかお化けの類が苦手じゃなかった? だから、もしかして今回の報告書を読まなかったのも単純に怖いからじゃないの?」

「そ、そんなわけないだろ!」

 ロズウェルは一転、勢いよく立ちあがった。表情からは、先程の暗さは消え去っている。が、明らかに顔が引きつっている。

「大体、歌だって風の音か何かの聞き間違いに違いない! 俺が幽霊なんて恐れていないことをちゃんと証明してやる! コウ、付いて来」

 力一杯ロズウェルが叫んでいる最中に、もう一度風がぶつかり、更に激しく唸った。近くのランプが床に叩き付けられて、壊れる程の衝撃。
 その衝撃音は、ロズウェルの言葉さえも遮った。

 そして、風の音が止んだ、その刹那。

 それは確かに聞こえた。

 同時に、警備兵は逃げ出してしまった。
 ロズウェルは再び座り込み、ガクガクと震えだした。
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