あふれる、ふれる。

廊下にでたしんちゃんは、電話から戻ってきた洋介をみつけると声をかけた。
「洋介さん、ナナコちゃん起きてたよ。」
「あれ、帰ったかと思ったのに。ようこは?」
洋介は意外なしんちゃんの登場に驚いた。
「先、かえった。俺は傘、忘れたから。」
しんちゃんは洋介の前に傘を差し出した。
傘をみた洋介は窓の外に目をむけた。
「雨、やんでるぞ?」
同じ反応をした兄弟に、しんちゃんは思わず笑った。
「ナナコちゃんと一緒のこと言ってるし。」
そのまま「じゃまた明日」といい、しんちゃんは笑いながら去っていった。

その後ろ姿をながめながら、洋介は口の中でつぶやいた。
「傘なんて理由にならねーし。勘弁してくれよな。。。」

雨がやんでも、空気の湿気はうっとうしく彼らを包んだままだった。
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