あふれる、ふれる。
*
まず、しんちゃんという男と、ナナコの出会いだけはふれておいたほうがいいだろうか。
先のミサとナナコの会話のおよそ1週間前、雨が降ったり止んだりを繰り返す曇天の日曜。
空気中に漂う元素たちが水分を最大限にまとい、追い討ちをかけるように室内に干された洗濯物からも、じわじわと湿気がにじみ出ている室内。それは、まさに最大限のじめじめ状態。
さらに追い討ちをかけるように、気温は朝からぐんぐんと上昇していた。
一言で言えば、最悪なほど高温多湿な昼時。
湿気にやられた母親が無気力に作り出した冷やしそうめんをすすりながらTVをみていたら、普段ならないケータイが小さく震えた。
「あら、珍しいわね。」
母親は好きな芸人が出ているTVからは視線をはずさないまま、ぼそっとつぶやいた。
ナナコはケータイ依存になっていく友達たちをみて、なんとなくケータイそのものに嫌気がさしていた。
以前、メアドを教えた友達から、レスが数時間後になっただけで号泣され、大揉めに揉めたことがあり、それ以来「メアドを教えてもレスするとは限らない」と公言し、あの切羽詰った、そして、常に監視されているような状況から逃れたい一心で、あまりケータイ自体を持ち歩かないようにしていたのだ。
その結果、母親が「娘とのメール交換」を夢見て買い与えたケータイは、常に家に置かれることになり「鳴らないケータイ」と化していたのだ。
母親のつぶやきを無視したまま、ナナコはケータイを手にとった。
まず、しんちゃんという男と、ナナコの出会いだけはふれておいたほうがいいだろうか。
先のミサとナナコの会話のおよそ1週間前、雨が降ったり止んだりを繰り返す曇天の日曜。
空気中に漂う元素たちが水分を最大限にまとい、追い討ちをかけるように室内に干された洗濯物からも、じわじわと湿気がにじみ出ている室内。それは、まさに最大限のじめじめ状態。
さらに追い討ちをかけるように、気温は朝からぐんぐんと上昇していた。
一言で言えば、最悪なほど高温多湿な昼時。
湿気にやられた母親が無気力に作り出した冷やしそうめんをすすりながらTVをみていたら、普段ならないケータイが小さく震えた。
「あら、珍しいわね。」
母親は好きな芸人が出ているTVからは視線をはずさないまま、ぼそっとつぶやいた。
ナナコはケータイ依存になっていく友達たちをみて、なんとなくケータイそのものに嫌気がさしていた。
以前、メアドを教えた友達から、レスが数時間後になっただけで号泣され、大揉めに揉めたことがあり、それ以来「メアドを教えてもレスするとは限らない」と公言し、あの切羽詰った、そして、常に監視されているような状況から逃れたい一心で、あまりケータイ自体を持ち歩かないようにしていたのだ。
その結果、母親が「娘とのメール交換」を夢見て買い与えたケータイは、常に家に置かれることになり「鳴らないケータイ」と化していたのだ。
母親のつぶやきを無視したまま、ナナコはケータイを手にとった。