あふれる、ふれる。
でも、つれだって去っていったふたり。
ふれてもらえて幸せな反面、やはり、あのふたりは恋人同士なんだと、改めて叩きつけられた事実に、ナナコの心は、あたたかいものを抱えたまま、深い淵に沈んでしまっていた。
兄にも、迷惑をかけてしまった。
しんちゃんにも、迷惑をかけてしまった。
ふたりは一緒にさっていった。
ふれてもらえた代償にしては、やや大きい気がした。
そんなことをぐるぐる考えていると、涙があふれてくるけど、泣いてる姿を兄にみせるのは、ますます迷惑をかける気がする。
ナナコは大きく息を吸うと、今日の出来事から意識をそらせようと、天井の模様を無心に数えだした。
ひとつ、ふたつ、みっつ…ああ、あの模様、ちょっと歪んでる。
次第に、涙腺がしまりはじめた。涙が頬をこぼれずにすんだことに、ナナコがちょっとほっとした。
刹那、ベッド仕切りのカーテンが突然開いた。
遮られていた夕日がベッドを明るく照らす。
兄・洋介と思い、視線をなげかけた先には、想定外の人物が逆光の中、たたずんでいた。
「しんちゃん…どうしたの?」
動揺しきったナナコはぽかんとした表情で訪ねた。
しんちゃんは、「ん?」と表情で答えながら、椅子に腰掛けた。
「傘、忘れたからさ。」
彼はビニール傘をナナコの目線まで持ち上げた。
ナナコは、夕日が注ぐ窓を確認した。
「雨、やんでるよ。」
しんちゃんは、照れたような表情で「学校に家の傘、全部おいてきちゃってるからさ」と言って自分の黒髪をくしゃくしゃっとまぜた。
ナナコは、夢をみてるようだった。
夢なら、願いが叶えられるかもしれないと思った。
ふれてもらえて幸せな反面、やはり、あのふたりは恋人同士なんだと、改めて叩きつけられた事実に、ナナコの心は、あたたかいものを抱えたまま、深い淵に沈んでしまっていた。
兄にも、迷惑をかけてしまった。
しんちゃんにも、迷惑をかけてしまった。
ふたりは一緒にさっていった。
ふれてもらえた代償にしては、やや大きい気がした。
そんなことをぐるぐる考えていると、涙があふれてくるけど、泣いてる姿を兄にみせるのは、ますます迷惑をかける気がする。
ナナコは大きく息を吸うと、今日の出来事から意識をそらせようと、天井の模様を無心に数えだした。
ひとつ、ふたつ、みっつ…ああ、あの模様、ちょっと歪んでる。
次第に、涙腺がしまりはじめた。涙が頬をこぼれずにすんだことに、ナナコがちょっとほっとした。
刹那、ベッド仕切りのカーテンが突然開いた。
遮られていた夕日がベッドを明るく照らす。
兄・洋介と思い、視線をなげかけた先には、想定外の人物が逆光の中、たたずんでいた。
「しんちゃん…どうしたの?」
動揺しきったナナコはぽかんとした表情で訪ねた。
しんちゃんは、「ん?」と表情で答えながら、椅子に腰掛けた。
「傘、忘れたからさ。」
彼はビニール傘をナナコの目線まで持ち上げた。
ナナコは、夕日が注ぐ窓を確認した。
「雨、やんでるよ。」
しんちゃんは、照れたような表情で「学校に家の傘、全部おいてきちゃってるからさ」と言って自分の黒髪をくしゃくしゃっとまぜた。
ナナコは、夢をみてるようだった。
夢なら、願いが叶えられるかもしれないと思った。