ショート シチュエーション{ Lovers Season }
ふと見ると、テーブルの上に
彼女の腕時計が無造作に
置かれていた。
白いリラの花びらが
一片‥
文字盤の傍に寄り添っている。
時間にかまけてさっきまで
全く気付かなかった。
窓からの一陣の風が
その花びらを舞い上げ
彼の胸元にそっと寄り添う‥
その時、
彼は無くしかけているモノの
温もりと大切さに気付か
された‥
彼はもう一度呟いた。
『冬が来て花は枯れても
また芽吹くんだ‥。
何度も何度でも‥
だろ‥?』
そう言うと、ポケットに
彼女の腕時計を忍ばせて
夕陽に染まりかけた街並みへと
駆け出した。
名も知らぬ公園の木の元、
あの日と同じブランコが
揺れていた。