ショート シチュエーション{ Lovers Season }
私達はそれぞれ別のものを
同じ目線でちゃんと
見ていたのだ。
枯れたのではない。
沈んだままでもない。
同じ場所に居て
ほんの少しだけ私が先を
歩いていただけ…
腕時計のリューズを回して
短針と長針を正午に
合わせる様に
二人の時が今、再び
重なったのだ。
あの日、この木の下で
交わした約束…
―5年前の事―
『ねぇ…私達にもしも
心がすれ違うような時が
来たらどうする?』
『無いよ…大丈夫さ』
『ホント?
ホントに?もしも、
そんな時が来たら私、
直ぐに枯れてしまうかもよ…』
『疑り深いなぁ、
大丈夫だって!
この木だって冬場は枯れ枝
だけだったのが、ほら、
こんなに芽吹いてるだろ?
俺達だってもし、そんな時が
あっても何度でも再生
できるさ…』
『もし、ホントに
そんな時が来たら‥
アタシここに
来よっかなぁ‥
ちゃんと見付けてくれる?』
『そんなふうには
させないよ!』
『じゃあ、約束!』
『あぁ、約束だ。』
あの日の言葉を忘れては
いなかったのだ。
『忘れてなんかないよ…。
俺が忘れるわけ無いだろ?』