ショート シチュエーション{ Lovers Season }



男の口唇が何かを告げる‥


「I Loved you‥」


女はまるで男が見えていない
かの様に、ただ真っ直ぐに
正面を向いて歩いている。


いつまでも食い下がる男に
最期通達を申し渡すと女は
再び車に乗り込み、
そのまま走り去って
行った。


茫然と立ちすくむ男‥


暫くの間、男はそこに立って
いたが、もう彼女の人生に
自分の居場所は無いと悟ったの
だろう。

肩を落とし、来た道をトボトボ
引き返して行った。


Cafeの男は再びNews Paperに
視線を落とす‥


ひとつの記事が目に飛び
込んで来た…


News Paperの片隅に一人の
男の死亡記事が載っていた。



著名なデザイナーの男。



部屋にはコバルト色の小瓶が
残されていたらしい。


男が生み出したデザインの
多くは《愛》をテーマにした
ものが殆どだった。



破局を迎えた直後の出来事
だったらしい‥


記事の中に葬儀の模様を
写した写真が載っている‥


その中にはあのミンクの
ロングファーコートの女らしき
女の姿が写っていた。


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