意識の底へ…。
「ねぇ、貴之、クリスマスは映画観に行こうよ。」

クリスマスイブにもかかわらず、私に何の連絡を入れてくれなかった貴之。

仕事が忙しいのも分かってる…。でも…。
(やっぱり、寂しいよ。貴之。)

会った時は優しく抱きしめてくれる貴之に私は、依存してるだけ?

ねぇ、不安で仕方ないよ。

貴方は彦星になりかけてるわ。

「ごめんっ。今週はずっと仕事があるんだ。」
社会は私達の間に天の川を作った。
「…………そう。」

「埋め合わせはちゃんとするから。」

(泣いちゃだめだ。)
「大丈夫だよ。お仕事頑張って。」

携帯電話に内蔵されたマイクに吹き込む声が震えた。

「本当にごめん。悠梨」

(まずい。バレたかも…。)
貴之の声音が悲しげな色を纏っていた。

「おやすみなさい。貴之。」

「…おやすみ。」

携帯電話の電源ボタンを押す瞬間がやけに虚しく感じた。

プツンッ と電子的に切られる音が嫌だ…。

一人きりのクリスマス。今日は早めに眠ろう。
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