失いいくものへの鎮魂歌
あいつの歳は最初見当もつかなかった

自分と同年輩くらいには見えた

何か悩み事を抱えている風にいつも暗い顔をして最前列車両のドアの近くに立っていた

晴れの日も
曇りの日も
雨の日も

それは変わることはなかった。


俺は自分の右腕を隠すため
春でも夏でもブルゾンを羽織ったような格好に装っていた


とても変人に見えたと思う

でも初めて見かけてから4ヶ月近く不定期に車両で近い位置に立っていて
やっと声をかける勇気が出た


「すいません…やぶからぼうに…
画家をしています…イメージを探していました


モデルになってもらえませんか…?」


彼女はニコッと笑って微笑んだ
「私で宜しければ…」
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