失いいくものへの鎮魂歌
僕はその晩、自宅兼アトリエに戻ってシャワーをいつもの倍の時間かけて浴びた。
固定ドライヤーで頭を乾かすと
その後三面鏡の前で二三時間自分の横顔正面の顔を吟味した

目が二重だったらよかったのに
鼻は小鼻がややあぐらをかいているのも気に入らない
痩せて精悍な顔立ちはまあ満足だ
そこがよかったのだろう彼女にとっては…


恋の始まりに不安要素はつきものだ
彼女は勇気を出して手術すればいいのに
もっとも肺がんについて僕には詳しい認識は無い

ベッドのあるアトリエにもどって
あるものが落ちていることに気がついた

彼女の落としていったカードだ

病院の診察券らしかった
彼女はじぶんの病気を肺がんと言っていたが
それは内科のものではなかった

そこには 精神疾患心理治療クリニックと書かれていた
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