アタシとじいさん

アタシの心を知ってか知らずか、トミさんは言った。



「本当は一緒に済んだっていい。

だけどそれじゃズミによくないだろ?

改めて自分が娘にしてしまったことの罪の重さを知って、

繰り返さないようにしなくちゃいけない。

ここで俺達が手助けしたら、ズミは甘えることになる。逃げることになる。

それだからケンさんは突き放してるんだ」



「甘えって…甘えたっていいじゃないですか!

だってアタシ達は他人だけど、『知り合い』じゃない。

ズミさんと『友達』なんだから。

友達なら辛いときは助けてあげないと…」



アタシはトミさんの言ってることが理解できなかった。


不服な顔をしてるアタシにトミさんは、微笑みながら、


「ひかりさんは優しいね。それはひかりさんの優しさ。

だけどね、ケンさんの優しさはひかりさんと違う優しさなんだよ。

あれはケンさんの精一杯の優しさなんだ。


きっとズミも分かってるし、ひかりさんもそのうち分かるよ」

「そのうち…か…」


そうトミさんに言われると何にも言えなかった。



そのうちっていつかな?



ねぇ…ケンちゃん…



< 106 / 113 >

この作品をシェア

pagetop