∑[シグマ]


ー何してるの?

少女は、目の前で指を組み、祈るようにしてしゃがんでいる少年に話し掛けた。

その視線の先にはマリア像があった。


ーん?何ってー…マリア様に感謝してるんだよ。


此方を振り返らずに少年は答えた。


ー何を?



少女は更に少年に近づき、問う。
すると少年はそちらに振り返り、フフッと天使のように笑った。



ーもちろん、今生きてることにさ。



また、彼は優しい優しい笑みを零した。
そして、更に彼は言葉を重ねた。



ー君は、知っているかい?アレルヤという言葉を。


ーアレルヤ?


ーうん。魔法の言葉さ。


少年はひまわりのように笑った。
そんなとても嬉しそうに話す少年を見て少女は、自分も満たされた気分だった。



†††††††††





「……あんたは今、何のために生きてるの?」

思わず言葉を漏らした自分の口に、石榴は自嘲気味に笑った。

(分かってたら、こんな風に苦労してないじゃない…。)

分かってたら、こんな風に…。




「…何、黄昏てるの?」


ハッと視線を窓から外す。



「…千影…。何?」


「何って…もうお昼だけど?」


そう言われ、教室の壁の中央に掛けられた時計の針は確かに12を過ぎていた。


「ホントだ。…でも全然お腹空いてない。」


「だだこねないでよ。…いつものとこ、行くんだろう?」


千影は、人差し指を上に差し出した。


「…ええ。報告もあるし。」


「りょーかい。」




そうして、2人は教室を出た。
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