∑[シグマ]
太陽が一番高く上がっている。
あの日初めて見た太陽は、涙が出るほど神々しかったのに流石に毎日見ていると、煩わしささえ感じる。
石榴は、毎日屋上で昼食をとる。他者と馴れ合いたくないという身勝手な理由ともう一つ。聴かれては不味い話があるからだ。
「…ーあつッ…。」
黒髪を風に靡かせ、石榴は左手をおでこに翳し、日除けとしている。オマケに溜め息を付いて。
直射日光はどうも慣れない。
「…屋上でお昼を食べなきゃ良い話だよ、石榴。」
「…嫌、彼らと一緒に仲良くとか。」
石榴は隣でピクニックシートを敷きながら話す、クリーム色の髪の少年に言う。
「それじゃ、仕方ないね。」
そう言うと、ポンポンとピクニックシートの上の埃を叩き、どうぞ?と促す。石榴はそれに従い渋々腰を下ろす。
「ねぇ、それより石榴って普通に呼ばないで。彼らに聞かれたら大変、千影。」
「…あ、すまない、無意識だよ。悪気はないよ、さくら。」
「…やっぱり、食えない奴ね。」
千影がケロッっとした顔をして言うものだから、石榴はイラッとして開かれているお弁当の卵焼きをブッ刺して口に放り込んだ。
「…おいひい。」
しかし、予想外の美味しさに思わず言葉が漏れた。
「そりゃ、どうも。」
千影は人当たりの良さそうな笑顔を貼り付けた。
「気持ち悪い笑顔しないで。」
「…そんなに変だった?人当たりはいいんだけどー」
石榴は、わかっちゃいないと深くため息を吐く。その笑顔は、あたし達の間では無意味なのに。しかし、今はそんなことを言っている場合ではないので、本題に入る。
「…動き出したわ。また、彼らが。」