保健室の彼

よく寝た~…

…じゃない!
ここどこ!?

白い天井、
白いベッド、
白いカーテン、

明らかに保健室だった。

仕切りのカーテンをおそるおそる開けると、
誰もいないみたい。

今のうちだ!

私は、自分にかかってた毛布をさっとたたみ、
ベッドの下に置いてあったカバンをつかんで、
ドアへと急いだ。

けど、一足遅かった。

戻ってきた水嶋先生と鉢合わせ。

最悪。

「良くなったんで帰ります!」

うわずった声で挨拶して、
先生の横を通り過ぎようとした瞬間、
腕をつかまれて、よろけた。

抱きしめられたみたいにになっちゃって、
私はとっさに離れた。

「君、昨日の子だよね?」

先生が近づいてくる。

2~3歩あとずさりしたら、後ろに机があって、もう下がれない。

こんな状況なのに、先生の整った顔にみとれる。
どんどん距離はつまるのに、逃げられなくて、

机に後ろ手をついた状態の私に、先生が覆いかぶさるような形になった。

近い!!

キスできそうな距離に、大好きな人の顔。

私はパニック状態だった。

「見たでしょ」

先生の吐息がかかる。

「み、見てません!!」

そのまま十秒くらい、
先生は真っ直ぐな視線で、私の目を見てた。

ドキドキしすぎて死にそう。

「ふーん…じゃ、そういうことにしといて」

口の端だけ上げて微笑むと、先生は私から離れて、
床に落ちてた私のカバンを拾い上げた。

「どうぞ、お嬢さん。
 あ、それから…」

ガラッ

「せんせ~!聴いてよ!」

チャラチャラした女子登場。

放心状態だった私は、やっと我に返った。
先生からカバンを一方的に受け取って、ダッシュ。


何なのあれ!!

素敵な人だと思ってたのに
何あの女慣れした感じ!

生徒にも手出してるし!

腹は立ったけど、
あんなに近くで好きな人の顔見て、
声聴いて、
しかも密着しちゃって、
私はすごくドキドキしてた。


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