楽園の姫君


日々涙を流す少女。


ラナシュにできたのは、少女を死なせないようにするため、少女の成長を遅らせることだけ。
でもそれさえも、少女のためになっているのか解らない。



ある日、ラナシュはふと気付いた。

かつて少女の周りにいた人々はどうなったのだろうか、と。

少女の笑顔は、周りに人々がいたからなのではなかったのか、と。

少女の周りの人々は笑ってはいなかっただろうか、と。

少女に決定的に足りなかったのは、周りの笑顔だ、と。



……自分が、その笑顔になってやろう、と。


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