楽園の姫君

――…その頃。


アナリアーナは部屋のバルコニーでぼーっとしていた。

彼女の前には冷めた紅茶とケーキが並べてあるが、手をつけた様子はない。




「アナリアーナ様、アナリアーナ様!!」


『―――!!

……キース?』


「なにか召し上がりませんと」

事務的に言うキースに寂しさを覚える日々。
ラナシュとも会えないのだから、気分は鬱々としてくる。


…まあ、夜起きていられない自分が悪いのだが。

もうちょっと。
あと一時間だけでも起きていれば、ラナシュと会えるだろう。
それなのに気付くと意識はなくて、朝になっている。

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