もう、いいの。


「そうでした。」


あたしは諦めて、

居酒屋へ入った。

平日ではあるけれど、

そこそこに人がいる。


「じゃさ、せめてめ

いっぱい飲み食いしちゃおう。

時田、

酔っ払って前後不覚に陥っても、

ちゃんと連れて帰ってね。」


カウンターの席について

座りながら、

時田は嫌な顔をした。


「あのね、オレ、

気持ちは男なんだよ。

もうちょっと、

気を使ってくれない?」


「何でよ。

女なら誰でもいい訳じゃ

ないんでしょ?」


時田は言葉を切って考えた。


「それは、そうだ。」


あまりはっきり言われると、

グッサリくるなあ。
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