もう、いいの。

そうだった。

あたしは知ってたけど。

それでも、

話をしたこともなかった。


考えたら時田が

どんな人なのか全く知らない。


「そうか。」


「そうだ。」


「時田ってさ、

ずっと、男の子、だったの?」


見ると、

時田はじっとあたしの目を

覗き込んだ。


「学、でいいよ。」


「・・・そうか。

学だもんね。

嘘の名前、使う必要ない。」


「うん。両親に感謝、

だな。

誤魔化しきかないくらいの

女の子名前だったら

かなわない。

・・・そだね、

実は物心ついた時から、

男だった。」


「不便だった?」


「不便?そうだな、

不便といえば、

最終的には、

自分のレベルを

落とす羽目になった。」


「どういうこと?」


「高校のレベル。

も一コ上のランクの学校に

行けたんだけど、そこ、

女子はセーラー服で。

それがどうしても嫌だったから」




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