もう、いいの。

確実にカッコよくなっているけれど、

時田学だ。

きゃしゃな体になじんだ、

おしゃれな感じのする背広姿。

でも、でも、

時田学は、女だったはず~~~っ!!

何でここに、男の格好でいるんだ!!?

時田学も、

驚いていきなり挙動不審になった

女子社員を眼の端でとらえてしまったらしい。

まっすぐにあたしを見た。

そして、ビクリとした。

体が震えあがるのが、

この距離でもはっきり分かるほどだった。

けれど話をするのが

所長に変わっていたために、

おそらくその反応を目にしたのは、

あたしだけだと思う。

時田学は、あたしを見ると、

刺すような視線を送ってきた。

あたしは、蛇に睨まれたカエル状態で、

怖くて視線が反らせない。

そして、時田学は、

冷やかな視線のまま、

にっこりとほほ笑んだ。

あたしは、完全に

時田蛇に呑み込まれたような気がした。

冷汗が、背中を伝った。
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