愛しいキミへ
ふっと甘い香りに包まれた。
花屋の甘い花の匂い。
そっと目を開けると店員さんのエプロンが見えた。
それであたしは抱き締められてるんだって分かった。
え…?
抱きしめ…?
これはどういう状況…?
想定してなかった事態にあたしの頭はパニくった。
でも、これで最後かもしれないと想いはあたしの行動を大胆にさせた。
ゆっくりと背中の方に手を回す。
身長は変わらないはずなのに、背中はあたしより全然広かった。
気を抜くと倒れてしまいそうな体を支えるように着ているTシャツを握りしめる。
俯いてるあたしの頭に硬いものが乗っかった。
「俺さぁ」
近くで聞こえる声であたしの肩に顎を乗せてるんだと思った。
「お前の事知ってた。
ずっと気になってたんだぞ?
でもな、付き合うとかそう言うのは無理なんだよ。
ごめんな。俺、馬鹿だからさぁこういう方法しか思いつかなくて。
忘れてほしい。
俺の事は。
お前には幸せになってほしいから。
だから…」
途中で切れた言葉の続きはあたしでも分かった。
さっきあたしが考えてた事。
迷惑かけないようにって。
でも、あたしからするのと相手に言われるのは違う。