愛しいキミへ
彼の弱点を突いたつもりが。
確かに人より少し背が高いのはコンプレックスだけれども…!!
「もう身長はいいじゃないですか!!あたしはひまわりを買いに来たんです」
「お前からなくせに…」
店員はつぶやくように言うとあたしを睨んできた。
意外に鋭い目つきで体が無意識のうちにびくっとなった。
それに負けまいとあたしはお財布からなけなしの2000円を取り出して差し出した。
「はい、どーぞ。2000円です」
彼を睨む。
するとふっと表情を緩めてあたしに向かって微笑む。
駄目なんだって…その笑顔。
悔しいけど、すっごくあたしの好みなんだもん。
いたずらで、意地悪そうな彼の笑み。
「すいません。こちらの商品、1000円でした」
表現したとか、そんなんじゃなく彼は本物の意地悪な人です。
あたしが花屋でそう叫ばなかっただけでも、褒めてほしい。
叫んで店長さんに迷惑はかけれないもん。
「1000円ですっ!」
彼の手を掴んで思いっきり掌にお札を押し付けた。
パチンといい音が花屋の中に響く。
ちょっと…あたしも痛かった…
相手の方はと言うと、少しも無表情を崩さず1000円を見つめてる。
「ちょっと、急いでるんだよ?あたしだって」
急げとは言われてないけど、後で遅いとか文句を言われるのはこっちだ。
時計を見ると、もう20分近くこの店にいる。
何も言わずに鉢をあたしに差し出してきた。
このままで行け、とそう言うんですか…!!
「袋に入れて倒れても弁償できない。このまま持ってけ」
さっきまでとは打って変わって真剣な眼であたしを見た。
いきなり変わる表情にあたしはドキッとしてしまう。
袋がなくても十分に平気な大きさ。
そう判断して受け取った。
くるりと出口に向き直ると‘おい’と声がした。
「また来いよ」
にやっと笑った顔は何かを企んでそうな感じ。