愛しいキミへ
2,夏休み
おかしいってか意地悪な店員に会って1日が過ぎた。
今日も病院にあたしは行かなきゃいけない。
昨日はさんざんだった。
折角綺麗なひまわり買ってきたのに。
『あら、鉢じゃなくて花束が良かったわ。それにもっと可愛らしい花にしてくれない?』
入院してる人ってわがままになる気がする。
ひまわりだって十分可愛いし、育てるのだって楽しいのに。
『母さんはねぇ、――――の花が好きだわ』
やばい、思い出せない。
肝心な花の部分だけ抜けてる!
どうしよう、とりあえず花屋にってもう周りに花屋ないし!!
一件以外…
あるのは外装がとっても可愛い花屋さんだけ。
やっぱりここしかないよね…
うん、気にしない。
チャリン。
とまた鈴の音を鳴らす。
いつもより涼しい外のせいで中の空気が寒く感じた。
「いらっしゃいませ」
下を向いて腕をこするあたしにまたあの不機嫌な声が降ってきた。
なんで、毎回毎回バイトのこの人なんだろう。
まだ2回しか来てないけど!
「もうちょっと明るい感じで声は出せないんですか!」
「あんたに言われたくないね」
こう言ったらこういう、あぁ言ったらあぁ言う。
典型的な見本だよ、もう。
「母が好きな花下さい」
一瞬沈黙が生まれた。
それからまたあのくくっという笑い声。
「何で俺があんたの母親が好きな花知ってんの?」
言われた途端顔が赤くなったのが分かった。
確かに、言われてみれば。
勢いで言っちゃったけど、もちろん知ってる訳はない。
だって、何の関わりも持たないもん。
「もう、母の好きな花じゃなくていいから!女性に人気のある花でお願いします!」
赤くなった顔を必死に俯いて隠す。
恥ずかしくてしょうがない。
「ふーん。りょーかい。人気なぁ」
店員はそう言って店内をうろうろし始めた。
手を顎の所に当てて考える仕草が何だか様になってる。
少年っぽい笑みに比べて随分と大人っぽい。
どれだけの顔を持ってんだろ?
多分、あたし以外の彼に親しい人は知ってる。
それにこんなにかっこいい彼が付き合ってる人がいないとは言えない。
頬が普通に戻ってきたのに今自分が考えている事に気づくとまた赤くなっていた。