蒼い月を見つけたら

e - GOOD NIGHT

 意外にもこざっぱりとした部屋に少し驚いた。

 右手奥のほうに一人暮らしにしては大きいキッチンと食事用のテーブルが設置してあるリビング。
左手には、3人がけのソファと低い机、それにとってつけたようにテレビが置いてあるだけだ。
テレビの上に乗っているのは大学の教科書らしい。

他に特筆すべき物はなかった。
観葉植物のひとつや壁にかける絵画があってもおかしくない広さはあったのだが。


 ルイトは左手の壁にある二つのドアを指して言った。


「手前が寝室で、向こうがバスルームとトイレ。出口も向こう。どうするミア。もう寝る?」

「うん、寝たい・・・」


 頭がぼんやりとしてきた。


「じゃ、全部明日にして・・・」

 ルイトは寝室のドアを開けた。
 一人用のベッドがひとつだけおいてある。後は勉強用と思われる机と本棚、それにクロゼット。


「ここで寝ていいよ。僕、そっちのソファで寝てるから。」

 ミアをベッドに座らせ、クロゼットを開けて毛布を2枚取り出すと、ルイトはにこっと笑った。


「疲れただろう?いろんなことは明日考えればいいよ。だから・・・」


 毛布の一枚をミアにふわっとかける。


「今日はゆっくり寝なよ?」
「・・・わかった。」
「よしよし、いい子だね♪」


 そういってルイトはミアの頭をなでる。

 子ども扱いされたことはわかったが文句を言う気にはなれず、むしろやさしい手のひら
の感触が心地よかった。


「もうおやすみ、ミア。」

「うん。」



 そう言いながら、体を傾ける。

 とん、と枕に頭をあずけた・・・と、そこまでで意識は急速に沈み込んでいく。




「おやすみ、ミア・・・」




 ルイトはミアが眠りについたのを確認してから部屋のドアを閉めた。



 ぱたん。








 きっとこれから忙しくなるから。

 きっとこれからつらいことがたくさん待っているから。

 だから、今日はゆっくりおやすみ。

 月のお姫様・・・
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