蒼い月を見つけたら
 ・・・違う

 そう言おうとしたが、喉がからからに渇いていて声にならなかった。


「お前が何も分からないっていうなら、今から知っていけばいいだろう?」


 それがいったいどうしたというのだろう。

 この喪失感を埋めるには、そんな言葉では軽すぎる。


「なんでだよ・・・!ルイトはルイトでそれを受け入れようとするし!」


 ルイト?ルイトはきっと知ってるよ?私が何を考えているかなんて・・・


「あいつがかわいそうじゃねえか。あんなにお前のこと大切にしてるのに・・・!」


 カイは額に手を当てて、視線を床に落とした。

 ああ、カイはルイトがすごく好きなんだな、と思った。ルイトのためにこんなにも怒ったり悲しんだりできるんだから。

 そう思ったら、微笑がもれた。


「・・・なんだよ。何がおかしいんだよっ。」


 カイがさらに不機嫌さを増して言う。


「・・・違うよ、カイ。きっとルイトはわかってる。」

「何がだ?」

「わたしが二人を信じたいと思ってることも、わたしが今なぜ二人の前に出て行きたくないかも。何を心配しているのかも。」


 よくわからないが、突然に、勝手に言葉が滑り出た。

 頭の中はぐちゃぐちゃなのに、言動の妙な冷静さはなぜか理解できた。そしてそれをおかしい、とも思えた。



「どうしていいかわからないんだ、わたしは。」



 頬にまた涙が伝った感覚があった。


「これからどうなるのかもわからないし、どうしていいかもわからない・・・怖いよ、すごく。だってわたしの中にはまだ『なにもない』んだから――」

 この喪失感は、いったいどうしたら伝わるのだろう。

 空虚なこの心には、いったいどうしたら光が差し込むのだろう・・・?

< 30 / 62 >

この作品をシェア

pagetop