蒼い月を見つけたら

b - DON'T CRY

 カイはずっとそのままでミアが顔を上げるまで待っていてくれた。

 ずいぶんたって、ミアはようやく落ち着いて顔を上げた。


「・・・元気になったか?」


 カイが聞いてくる。

 優しい声にまた泣きそうになったが、こらえた。



「うん。」


 ちゃんと笑えた。

 もう大丈夫な気がした。自分は、一人ではない。

 今度ははっきりとこの二人を信じているといえる気がした。
傷ついてもいいからこの二人を信じたい。
そう思えるようになった自分に驚いた。


 それは泣いている間ずっとカイが傍にいてくれたからなのか、ルイトが何もかも理解したうえで自分を受け入れてくれたからなのか、それともカイがルイトのことを本当に大切に思っていることに気づいたからなのかはわからない。


 いずれにせよ心落ちつけて二人のことを受け入れる準備が出来たのだけは確かだった。


「目、赤いぞ。とりあえず顔洗ってこい。」

「わかってるよ。」



 ずっと握っていたカイの手をようやく開放して、腕でぐいぐいと涙の後を消した。


 もう、大丈夫。

 手足に力を入れて、思い切って立ち上がる。


 思いのほか心がすっきりとしていた。体の調子もかなりいいらしい。



「でもな、ミア。」

「なに?」



 カイも、よっと掛け声をかけて立ち上がった。

 ミアより頭ひとつ分以上高い。ひょっとするとルイトよりも背が高いかもしれない。


「あんまり無理するなよ?」


 そういって、くしゃりとミアの濃い青の髪をなでた。

 灰色の瞳には、優しさがあふれている。きっとこの瞳は、光を浴びれば銀色に見えるのだろう。


「・・・わかってるよ。」


 ミアはもう一度笑うと、部屋のドアに手をかけた。
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