蒼い月を見つけたら


 今度はあわてて人間が飛び込んでくることも、その勢いでルイトが弾き飛ばされることもなかった。


「ユリア。テツヤさんだよ。」

「えーっ?てっちゃん来たのー?」


 ルイトについで入ってきたのは、黒髪にすみれ色の瞳を持つ二十代と思われる男性だった。
寡黙な人なのだろうということはまとう雰囲気から察することができる。
切れ長の瞳に灯る理知的な光が印象的だった。


 どこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せなかった。


「お久しぶりです、ルナ様。」

「てっちゃん?ミアちゃんそう呼ばれるのが嫌いだって言わなかった?」

「ああ、そうでした。ミア様、お久しぶりでございます。」


 深々と頭を下げるその男性に、もちろん見覚えはない。

 話の流れから、ユリアの夫に当たる人なのだろうということはわかる。それに、瞳の色からどうやら『力を持つ人』らしいこともわかる。


「お前は何を考えている?」

「何のこと?」


 テツヤの問いに、ユリアは小首を傾げて見せる。


「ル・・・ミア様の一大事に俺がかけつけないとでも思ったのか?」

「やーね、てっちゃん。すねてるのー?」

「俺はお前が俺をおいて行ったわけを聞いているんだ。」

「だって急いでたんだもん。」




 口論を始めた二人を苦笑して、ルイトはミアに謝る。

「ごめんね、ミア。突然騒々しくなっちゃって。」

「いや、いいよ。」


 それよりむしろ、問題なのは・・・

 わたしの周りには、自己中しかいないってこと・・・


「はあ・・・。」


 もしかしてわたし自身かなり自己中だったんじゃないだろうか?

 それは、考えないことにしよう。



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