蒼い月を見つけたら
風呂から出て、ユリアの用意してくれた服を着てミアはリビングに戻った。
「ミアちゃん、髪はちゃんと乾かさないと風邪ひくわよ?ほら、もう一回戻って!」
ユリアがそう言ってこつん、とミアの額を小突いた。背を押されてミアはもう一度鏡の前へ。
「せっかくきれいな髪持ってるんだから、きちんとしてあげないともったいないわよ?」
ユリアはそう言いつつミアの髪にドライヤーの風を当てた。
ゴオオ・・・というファンの音が耳元に響いた。
「そういえば、ユリアさんの髪の色ってやっぱりもともとなんですか?」
「これ?そーよ。あたし一応クォーターだもの。」
「え?そうなんですか?」
「そうよ~。だからルイトもそうね。あなたたちには見えないんでしょうけど、ルイトもあたしと同じ髪の色よ。」
「!」
ミアの目に映るルイトの髪は、漆黒。どれだけ光を当てても黒にしか見えないほどに深い色。
それが本当はユリアのようにやわらかいこげ茶色なのだという。
「ちょっと見てみたいかも。」
「そうね。あの子色白だしあんまり日本人ぽくないかもね~。・・・あの子、そうとう美人でしょ?」
「はい。最初見たときからきれいな人だなーって。」
「やっぱり?」
ユリアがうれしそうに目を細める。
「なにしろあたしの自慢のいとこなんだからね~。」
ぱちん、とウィンクしてみせるユリアも、実のところかなり美人だ。若く見えるとは言ってもやはりどこか大人っぽい雰囲気を持っている、とても魅力的な人だと思う。
姉がいたらこんな感じなんだろうか――そう思うと、心が温かくなった。
「はい、おっけー。」
ドライヤーの音がやんだ。
ユリアはにっこりと微笑むと、ミアの肩をぽん、とたたいた。
「じゃ、その美人さんのところにもどりましょう。」
ミアも思わずつられて笑みをこぼした。