蒼い月を見つけたら
 抱き上げられて目線が高くなると、ここがそれなりに大きな街の中心部であることがわかった。
周囲のビルはこのビルより低い。
それが見えなかっただけだ。

 ルイトはまたにこりと笑いかけた。


「ごめんねー。怖いかもしれないけどちょっとだけ我慢してねー。少し飛ぶから・・・って怖がるなんて普段の君なら絶対ありえないことだけど。」

 その言葉が終わるか終わらないかのうち、さらに目線が高くなった。
 驚いている暇はない。ぐんぐんとビルの屋上が遠ざかっていく。


「う、嘘っ!」
「ほんとだよ♪」

 『飛ぶ』という言葉通りにルイトの体は完全に宙に浮いていた。もはや疑うまでもない。ビルの屋上は遥か下に遠ざかり、点々とした街の明かりが煌いていた。


「信じらんないっ。」
「あ、怖かったら目を瞑っててね~♪」


 言うまでもなくぎゅっとルイトの首筋に抱きつくと、ルイトの嬉しそうな声がした。


「こういう君もいいなあ♪かわいくて♪いつもの君も凛々しくて好きだけど♪」
「・・・っ!」


 何かを言い返す余裕もない。
 はるか下に広がる夜景を堪能することもなく、ずっとルイトの肩に顔を埋めていたのだった。

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