蒼い月を見つけたら
そのサリナはその瞬間呆けたように立ち尽くした。
「な、何を言ってらっしゃるのです・・・?」
「なにをって、君が一番よくわかるはずだけど?」
ルイトは笑顔のまま尋問する。
「そんなじゃ僕は騙せないよ♪一応これでもメルドだから。」
隣にいたミアをユリアに渡して、ルイトは一歩前に進み出た。
思わず二人から目を背けるミアをユリアがぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫よ、ミアちゃん。ルイトは強いんだから!」
それに返答する代わりに、ミアはユリアの肩に強く額を押し付けた。
「いちおうカイから精神感応を使うイレブンスがいるって聞いてたから。もう元の姿に戻っていいよ?」
「ああ、もうアポロと接触したわけか。」
突如サリナの声が変わった。
男性的な低いトーンの声。
ゆらり・・・と空間がゆがんだようになり、それが直るころにはサリナの姿が消えて。
「初めまして、かな?清神累斗くん・・・いいや、メルド。」
「どうもこちらこそ♪貴方の名前を尋ねてもいいかな?」
昼間の太陽の光を浴びてなお光をまったく反射しない漆黒の髪。同色の瞳。ルイトと同い年か少し年上に見える青年だった。切れ長の瞳は決して笑っていない。黒フレームの眼鏡が顔の一部と思えるほどに似合っている。
「オレの名は榊川(さかきがわ)琥狼(くろう)。琥珀の琥にオオカミでクロウ、だ。」