蒼い月を見つけたら
 クロウの声とともに頭痛は酷くなる。

 何かが胸の奥底から湧き上がってくる感じがした。熱いもの。・・・とてつもなく、熱いもの。


「ミア!」


 ルイトが痛みに顔をしかめているミアに駆け寄った。


「だめだよ。聞いちゃだめ。」


 懇願するようにつぶやいてきっとクロウに向き直る。


「そうよ!あなた、何をでたらめいってるの?ミアちゃんがカイを攻撃するわけないでしょう!」

「おや、それはどうかな?メルドは知っているようだけど。」

「・・・やめてくれない?『セドナ』。」


 ミアの位置からルイトの表情は見えない。だが、口調で怒っていることは伝わってきた。

 とはいっても頭痛が酷くて何も考える気がしない。





 自分がカイを攻撃したのか?酷い怪我を負わせたのか?

 しかしカイは元気そうだった・・・




 意識がとぶ。



 もう自我を保っているのが困難だった。


「ルイト・・・わたし・・・」


 何かが胸の奥からこみ上げてくる。

 熱い、熱い何か。


「ミア!」


 本当に心配そうな顔で、今一瞬見せた怒りすらも消し去って、ルイトは自分を見てくれる。心配してくれている。




――でももう、だめだ。



 ミアは意識を手放した。
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