蒼い月を見つけたら
「覚えてるさ。初対面でいきなりなれなれしく声かけてきやがった第十一番目の星の長『セドナ』だ。んでもって本名が榊川琥狼。しかもカイに攻撃させやがって・・・!」
 ミアのサファイアブルーの瞳に怒りがみなぎる。


「・・・違う。もっと前のこと・・・。」

「もっと前だと?」



 ミアは眉をしかめる。

 その表情を見たクロウは少しだけ悲しげな顔をした。まるで何かに裏切られて絶望したかのように。


「それならもういい。」

「何がだよ?」



 クロウはその問いに答えることなく一足でミアの目の前に立った。


「・・・っ!」


 よける間もない。

 繰り出そうとした拳はクロウの凛とした声によってその動きを止められた。


「戻りなさい。」


 その言葉にどんな意味が、どんな力が、どんな感情がこめられていたのか本人以外には知るよしもない。

 しかし、その言葉は確実にミアの心をつらぬいた。

 大きなダメージを受けたミアはその場に崩れ落ちようとした。

 その肢体をクロウが支える。



「ミア!」



 その瞬間カイは自力で金縛りを打ち破った。

 それに驚いて、しかもミアを抱えていて動けないクロウに向かって拳を放つ。


「バキィッ」


 攻撃が初めてクロウにヒットした。

 クロウはミアを抱えたまま後ろ向きに倒れた。


「ドサッ」


 クロウの上に乗りかかるような形になったミアをカイはすぐに助け起こす。

 やっとこの腕の中に大切な人が戻ってきた・・・カイは一瞬安堵してからクロウと距離をとった。


「やれやれ・・・まさか破られるとは・・・」


 クロウはゆっくりと上体を起こした。

 頬にくっきりあざができている。



「今日はでも・・・もういい。」



 クロウは一度悲しげに微笑んだ。

 その心にどんな感情が渦巻いているのか。誰にも分からない。それは、本人のみが知るところだ。


 もう一度カイの腕の中にいるミアを見ると、



「すべてを見守る尊き星 ここに新たな道を開かん」



 言霊を唱えた次の瞬間にはふっと消えていた。

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