蒼い月を見つけたら
この話が本当かはわからない。自分が何者なのかもわからない。
「・・・心配してくれてありがとう。」
でも、この人が自分のことを大事に思ってくれているのは本当。それだけはわかる。
だから、少しだけこの人を信じてみようと思った。
「いえ、どういたしまして♪」
もう一度にこりと笑う。つられてぎこちないながらも微笑むと、ルイトはまた驚いたような顔をした。
「うわああ、かわいい!カイに見せてやりたいっ!」
「カイ?」
その名前を聞くと、妙に心がザワリと波立った。
「さっき言ってた太陽で一番強い人の名前だよ。君とすごく仲がよかったんだ。」
「あ、そういえば・・・わたしの名前、なんて言うの?」
「言ってなかった?あ、そうかも。ごめんねー。最初に言うべきだよね。」
ルイトはにこりと笑うと、すっと右手の人差し指で空に文字を書いた。
その軌跡が光の帯となって宙に文字を浮かび上がらせる。
「大坂井美愛(おおざかいみあ)。かわいい名前でしょ♪」
その名は自分の中でしっくりとなじんだ。それはどこか心の奥底に自分の名前を覚えているせいなのか。
「僕は清神累斗(せいじんるいと)。それからさっき言ってた太陽で一番強い人は四条海(しじょうかい)。」
ルイトはすらすらと空中に光の文字を書いていく。
「それじゃあ、あなたは何者?わたしとどういう関係だったの・・・?」
「僕?僕はね、君たち・・・つまり君とカイの兄貴みたいなものだよ。二人ほど強くはないけどそれなりに力は使える。力を持っていたことを忘れてしまった今の君を守ってあげられるくらいにはね。」
ルイトはそう言うと、ふっと暗闇の向こうに目をやった。
「もう見つかっちゃったみたいだね。」
少し声を潜めて言ったルイトの横顔は今までで一番真剣な光を帯びていた。