セツナイ恋愛短編集―涙と絆創膏―
甘くて

少しこおばしい



…オニオンの香り




俺は
少し落ち着いてから


鉢を見つめた



スプーンを
用意して



少しすくう


金色の透き通った
スープを


口に運んだ



「…あったかいな」



あたたかさが
舌に伝わって



喉に伝う頃



俺の目から
ぼろぼろと

涙が落ちて



嗚咽がもれて




俺は
何年かぶりに




感情を
思い出した


気がした


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