セツナイ恋愛短編集―涙と絆創膏―

あの日以来


嫌なことがあると
あのカフェに行って



ミルクティーを
たのむ



「ミルクティーを、ください」



落ち着いた雰囲気の
オープンカフェ


あめいろの
木を基調とした
店内


50代くらいかな
ダンディなマスター


白髪まじりだけど
それがメッシュみたいに見えて


逆に垢抜けてる


「冷たくて、いいんだね」


おじさんは
テノールで静かに
言う



「はい」



と私も
できるだけ静かに答える

私は冷たい方が好き


温かいものは


どうせ

いつか


…冷めるから



気付いたら
私は事が終わると


必ず
このカフェに来るようになっていた
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