嘘吐き


「じゃあ俺…そろそろ行くね」


涼がシャツに腕を通しながらそう言った。


「もう行くの?」


「うん、親に早く帰ってこいっていわれてるから」


「そっか…」


自分も服を着て、玄関まで送っていった。


「今日も駅まで送ってかないほうがいい?」


「今度こそ離れられなくなっちゃうからさ」


そういって少しさみしそうに笑った。


「最後にいっこ言わせて?」


最後と聞いて、あたしのほうもさみしくなってきてしまった。


「俺に会わない間、誰とも付き合うなとは言わないけど…本当に好きになった人と付き合ってほしい。
あと…俺が戻るまで待っててくれるんだよね…?」



涼らしくもなく、自信が無さそうに聞いてきた。


「当然でしょ?
ちゃんと待ってるから、できるだけ早く来てよね」


「うん、頑張る。
本当にありがと」


そう言うと、最後にきつく抱き締められ、深いキスをした。


今の私達は行動に移すほうが、ことばで言うよりもずっと気持ちが伝わるってことをちゃんと理解してる。
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