嘘吐き
「君、まだ未成年でしょ?こんな時間に一人でいて大丈夫なの?」
年下が声をかけてきたのは初めてで、どんな話をしたらいいのか分からず困ってしまった。
「お姉さんだって大学生でしょ?」
「大学生と高校生じゃ違うの。
私は里奈。
君は何て言うの?」
「俺は涼。17才。」
そしてかなり雑な自己紹介を終えるといきなり真剣な顔つきになり、こちらを見つめてきた。
何でも見通してしまいそうなその視線から、なぜか逃げたくなってしまう。
「…何?」
「里奈さん、お願いがあるんですけど…」
「まず敬語はやめて。
それで?」
「今日一日だけ、家に泊めて」
いきなり何を言いだすんだろうと思った。
もう少し色々話してから言うことだって、分からないんだろうか。
とりあえず理由だけでも聞いてみることにした。
「何で?」
「今日家出してきて…」
「理由は?」
「親の暴力に耐えられなくなったから」
そう言って彼がシャツのボタンを外すと、腹部にアザがいくつもついているのがわかった。
とても痛々しかったけど、目を逸らそうとは思わない。
そして無意識のうちに私は手を伸ばして傷を触っていた。
彼の肌はとても暖かかった。