嘘吐き
何か言わなきゃいけないと思っていると、彼の方から言葉を発した。
「綺麗な目だね」
「…くどいてるの?」
「そうじゃなくて…
純粋にそう思ったんだけど」
終始ほほ笑みながら、こんなことを言う彼を見て、
無理してでも、この子の顔を歪ませてみたい。
そんな考えがふと思い浮かんだ。
こんな汚い自分が嫌になる。
でも一度思いついてしまったものは、やらないと気が済まない。
あたしは我儘な人間だ。
「私の言うこと、何でもきくんだよね?」
「うん、そのつもりだけど」
一瞬不安で表情が曇った。
「じゃあ…キスして」
あ、そんなことか
そう思ったのだろう。
何のためらいもなくキスをされた。
暖かい唇…
触れただけなのに溶けそうだった。
「続きもする?」
余裕の表情。
「うん。ベッドはこっちだから」
私も負けたくないので、強気に答えた。
手を引いて寝室に案内する。