嘘吐き

何か言わなきゃいけないと思っていると、彼の方から言葉を発した。


「綺麗な目だね」


「…くどいてるの?」


「そうじゃなくて…
純粋にそう思ったんだけど」

終始ほほ笑みながら、こんなことを言う彼を見て、

無理してでも、この子の顔を歪ませてみたい。

そんな考えがふと思い浮かんだ。
こんな汚い自分が嫌になる。

でも一度思いついてしまったものは、やらないと気が済まない。
あたしは我儘な人間だ。


「私の言うこと、何でもきくんだよね?」


「うん、そのつもりだけど」


一瞬不安で表情が曇った。


「じゃあ…キスして」

あ、そんなことか
そう思ったのだろう。

何のためらいもなくキスをされた。
暖かい唇…


触れただけなのに溶けそうだった。


「続きもする?」


余裕の表情。


「うん。ベッドはこっちだから」


私も負けたくないので、強気に答えた。
手を引いて寝室に案内する。
< 22 / 117 >

この作品をシェア

pagetop