嘘吐き

「気持ち良かった?」


苦しそうに呼吸をしながら聞いてくる。


「うん」


それなりにねって心のなかで付け足した。


それを聞いて安心したのか、彼は私を抱きながらそそくさと眠ってしまった。



私は全てに於いて冷めている。


かれこれ拓とも1年近く付き合っているが、本当のところ、一度もいとしいと思ったことがない。


いや。

誰かを愛したこと自体全くない。


かわいそうな人は、拓じゃなくて私の方なんだろうか。
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