嘘吐き
こんな大雨のなか、傘もささずに走っているなんて、やはり変なんだろうか


行き違う人の視線が気になる。



しかし、雨はさっきまでの自分を全部洗い流して、無かったことにしてくれているみたいで、何だかとても心地よかった。



少し走ると、自分のマンションに到着した。



私の親は離婚したので、このマンションでママと二人で暮している。
といってもママは会社の方の事務所で生活してるから、ほぼ一人暮らしに近いんだけど。



「お帰り」


一ヵ月ぶりに人の声が聞こえたので驚いた。


「ただいま
っていうか、帰ってたんだ」

「たまには家が恋しくなるの。
シャワー浴びてきなさい」

そう促され、風呂場へ向かった。

何があったかは聞かない。
無責任だと思う人もいるかもしれないけど、そのほうが都合がいい。
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