嘘吐き
しばらくの間、服も着ないで抱きあっていた。
お互いが同じ気持ちで居られるってこんなに幸せなんだと胸がいっぱいになった。
もう少しこの甘い空気に酔ってたい気もするけど…
でも今は、それ以前に聞かなきゃいけないこと、話さなきゃいけないことが色々あるんだ。
「ねぇ…この空気一気に壊すようなこと言ってもいい?」
「何?
やっぱり好きじゃないかもとか言い出しちゃう?」
「そんなんじゃなくて…
何で涼は進学しないのか、聞きたかったから」
さっきからずっと気になっていた。
「もうあの家にいたくないから。
今の生活続くくらいなら、高卒で働く方がマシ」
「大学はそんなにいいところじゃないかもしれないけど、将来の選択肢は増やしておいた方がいいんじゃないかなって」
「里奈もみんなと同じこと言う…」
少し拗ねた声でそう言った。
確かに今の発言は親のようだ…
でも、ただ私の考えも聞いてほしかった。
「最終的に決めるのは、涼だから、その通りにしなきゃいけないわけじゃないよ?
私の考えはそうってだけ。
今、明確にやりたいことがあるのかないのか知らないけど、確実に進学した方が知識の幅もやれることも広がるから。
とりあえず後悔はしてほしくないの」
そこに私がいるいないはおいておいて、彼には幸せになってもらいたい。それが今の気持ちだった。
それが伝わったのか、さすがに今回は納得したようだ。
「わかった…ありがと。
帰ったらもう一回母親と話してみる」
そう言ってもらえてすごく嬉しかった。