愛憎友達
「絶対捨てたりなんかしないで」

和飛は朝葉の左手をとると、薬指に軽く口づけをした。

「いつかこの場所にはめるまでは…」

和飛から出てくる言葉はいつもくさいと思う。

普通ならこんな言葉で女は引っかからない。

それでもドキンときてしまうのは、朝葉が和飛を男の子として意識し始めている証拠だろう。

「朝葉、行かないよ」

和飛の手を振り払い、やや強めの口調で宣言した。

「一緒に過ごす必要なんかないじゃない。だって朝葉たちは……」

「んなことわかってる。確かに俺たちは恋人同士じゃない。でも朝葉はが好きなんだよ。好き過ぎるんだよ。だから一緒にいたいって思うのは当たり前だろ。違うか?」

また朝葉の傾いた心が揺れ動く。

向けられる和飛の目があまりにも真剣で、朝葉は返す言葉を見失ってしまった。
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