一生分の恋
泥沼
それからしばらくの間、いつもと変わらない日常が続いた。

休み時間の逢瀬。
ベタベタといちゃつく自分達に好奇心やからかいの視線を感じることもしばしばだったが、まったく気にしていなかった。
お互いが分かり合えていればそれだけで充分だと思っていたのだが…

マイは相変わらずの素っ気なさで私を打ちのめす事もたびたびあった。

こちらからの接触は拒絶しないものの、マイの方からは触れても来ない…
会いにもあまりこない。
あの日のあの教室の夕暮れ。
確かに心が通じあったと、マイの心を自分のモノにできたと思っていた。
家にも入れてくれないし、休日に映画に誘っても断られる。

きちんと自分の思いを伝えよう。
そう思った。
やっぱりひとりで空回りをしていただけだったと気付いてしまった。

よく、話題が尽きないものだと思うが、毎日の手紙のやりとりは続いていたので、ある日の授業中に、そっと思いを綴った。

冗談だと思われる可能性を考えて、何気ない文章がいい。普段と同じような文面で。


どうもマイの事が好きになったみたいなんだけど。友達としてじゃなくだよ。


いつもは単に四つ折りにして渡す紙片を、今回は凝った折り方にした。渡した瞬間に読まれたりしたらたまらない…

昼休みでない短い休み時間に渡しに行く事にした。
緊張や、告白する時のドキドキも無かった。マイが自分の気持ちをわかってないことなど無い、と高をくくっていたのだと思う。

たいした自信だ。

まったくいつものようにハイ、と手紙を渡した。
マイへの手紙の返事は、午前中に渡した手紙なら昼休みには返事がある。
渡す時にはほとんど無かった緊張感が増してきている。つまらない授業の内容も、いつにも増して耳のそばを素通りしていく。
短い休憩の休み時間の喧騒も膜を通して聞くように不明瞭で、ノイズとも感じない。

きっと大丈夫。これからも二人一緒で幸せな日々が続く。

いや、やっぱりリアリストな彼女が同性同士の関係を現実として受け入れるのは無理なのか…

もちろん周りがどう言おうと彼女を守る覚悟はある!

ひとりで赤くなったり青くなったり…

そして味のしない給食を腹に納めて、運命の時を待つ。
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