一生分の恋
こんな事をつらつらと考えながら残りの授業をこなした放課後。

適当に廊下で騒いでいる男子達を避けてとぼとぼと廊下を歩いていると、マイの姿を見つけた。

壁にもたれて立っている彼女は、男女三人ほどの友人達に囲まれて談笑の最中。

悔しかった。
もう、あの輪の中には入れない。マイと楽しい時間を過ごす事もできない。
マイを幸せにするのは自分なのに!

なぜ!

その日からは、自分の気持ちが本気で、一生に一度のものだということを、どうしたらマイに分かってもらえるかを考えた。

手紙のやり取りも、回数は減ったものの以前のように続いていたので、会うたびに、本気なんだ、と訴え、はいはい、といなされた。
いつかしか、決まり事のようになったこのやり取りは、その年が明けるまで2ヶ月以上続き…

袋小路にハマった。

このまま、マイにとっての友達で終わってしまう。
友達でいられるだけで幸運なのか。

いや、マイは自分の告白を受け止めた上で友達を続けているのではない。
そもそも、自分の告白は本気のものだと認識すらしていない。一時期の気の迷いだと…

こんな悲しい事はないんじゃないか?
自分の告白を信じてもらえない。じゃあ自分のこの想いはどうすればいい?
いっそのこと、ハッキリ振られてしまった方がずっと楽だ。今も振られているようなものかも知れないが、せめて自分の気持ちだけは受け取って欲しい!

結局は、決死の告白からも表面状はいつもと変わらない日常が続き、中学二年生になった。

教室は三階から一階に変わり、マイとは隣のクラスになった。

相変わらず、本気だと伝え続けているが、言えば言うほど冗談に聞こえるようで、上も下も分からない深い海中をもがいているような状況が、もどかしくて仕方なかった。
雪も完全になくなった5月の末。意外にも、あまりウマの合わない母が突破口を開いた。

いつものように、風呂上がりにパジャマ姿でテレビを眺めていた自分に、母が一言、

「あんたは傷ひとつない、きれいな肌をしているねぇ」
と。

もともとが色白で、確かに跡が残るような怪我をしたことはないかも知れない。

本来は誉め言葉として受け取られるべきだろうこの言葉は、瞬時にひらめきをもたらした。

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