一生分の恋
明かりがついている。
マイは夜更かしするほうで、きっとテレビを見ているのだろう。
他の人たちとはできない、深夜番組の話もマイとならできる。
しばらく窓を見つめていた。
熱っぽい腕を触りながら。
好きだ、好きだ。
何度も心で念じた。窓の明かりの中のマイにとどけ。
10分くらいは立ち尽くしていた。
そばを通りかかったおじさんが、不審そうな目つきで見て行ったのを機に、帰り道を辿り始めた。
満足していた。幸福だった。好きな人のために、という自己満足だとしても、幸せは幸せなのだ。
翌日から傷は前回と同様に赤く腫れ上がった。
さすがに半袖で1日家にいると、家族にもバレる。
むしろ、今までバレなかったのが不思議なくらいだ。
こんな事になった原因を自分が作ったとは知らない母親は
「きれいな肌なのに…もったいない…」
と。
極めて常識的な母親が、精神科に連れ行こうとしなかったのは、単なる知識不足が原因だったようだ。
自傷行為、という言葉さえ、知らないんだろう。
姉などは、ただ一言、
「変態」
と。
多少ココロに刺さる言葉ではあったが、自分の精神は正常で、傷跡を残して少しは男っぽくなる、という目的がある。
そもそも家族には何の迷惑もかけてはいない。
筋トレの効果はあまりなく、体つきの変化は望めそうになかった。
腹筋は200回、腕立ても50回はやっていたが、女性特有の皮下脂肪の厚さは、痩せてもどうにかなるものではなく、がっかりした。
腕の傷はカッターよりもはっきりとした跡を残した。少しだが、傷跡が盛り上がっている。しかし、全ての傷がそうなっている訳ではなく、特に深く刃が食い込んだ線だけが盛り上がっているようだ。
このまま、何度か繰り返せばしっかり跡になりそうだ。
休みも明けてしまうが、別に誰も気にしないだろう。
現に家族でさえ、一週間は気付いていなかった。
一週間に一度程のペースで腕を切った。
傷が派手なのは切ってからの2日間くらいで、その後はたいした目立たない。
クラスメートにも、教師にもバレなかった。何人かに「どうしたの?」と聞かれたが、転んだ、と答えておけば、だれも疑っている様子はない。
みんな、自傷している、なんて発想が元からないんだろう。
マイは夜更かしするほうで、きっとテレビを見ているのだろう。
他の人たちとはできない、深夜番組の話もマイとならできる。
しばらく窓を見つめていた。
熱っぽい腕を触りながら。
好きだ、好きだ。
何度も心で念じた。窓の明かりの中のマイにとどけ。
10分くらいは立ち尽くしていた。
そばを通りかかったおじさんが、不審そうな目つきで見て行ったのを機に、帰り道を辿り始めた。
満足していた。幸福だった。好きな人のために、という自己満足だとしても、幸せは幸せなのだ。
翌日から傷は前回と同様に赤く腫れ上がった。
さすがに半袖で1日家にいると、家族にもバレる。
むしろ、今までバレなかったのが不思議なくらいだ。
こんな事になった原因を自分が作ったとは知らない母親は
「きれいな肌なのに…もったいない…」
と。
極めて常識的な母親が、精神科に連れ行こうとしなかったのは、単なる知識不足が原因だったようだ。
自傷行為、という言葉さえ、知らないんだろう。
姉などは、ただ一言、
「変態」
と。
多少ココロに刺さる言葉ではあったが、自分の精神は正常で、傷跡を残して少しは男っぽくなる、という目的がある。
そもそも家族には何の迷惑もかけてはいない。
筋トレの効果はあまりなく、体つきの変化は望めそうになかった。
腹筋は200回、腕立ても50回はやっていたが、女性特有の皮下脂肪の厚さは、痩せてもどうにかなるものではなく、がっかりした。
腕の傷はカッターよりもはっきりとした跡を残した。少しだが、傷跡が盛り上がっている。しかし、全ての傷がそうなっている訳ではなく、特に深く刃が食い込んだ線だけが盛り上がっているようだ。
このまま、何度か繰り返せばしっかり跡になりそうだ。
休みも明けてしまうが、別に誰も気にしないだろう。
現に家族でさえ、一週間は気付いていなかった。
一週間に一度程のペースで腕を切った。
傷が派手なのは切ってからの2日間くらいで、その後はたいした目立たない。
クラスメートにも、教師にもバレなかった。何人かに「どうしたの?」と聞かれたが、転んだ、と答えておけば、だれも疑っている様子はない。
みんな、自傷している、なんて発想が元からないんだろう。