一生分の恋
「何聞かれた?」

「なんか、仲の良い友人の名前を3人挙げろってさ」

「なんだそれ?先生には関係ないじゃんねぇ。で、誰の名前言ったのさ」

そんな周囲の会話を聞くともなく聞きながら、自分は誰の名前を挙げるだろうかと考えた。
もちろん一人はマイの名前だろう。
あとの2人は?

誰でもいいか。

今はマイだけが友達でいい。でも、果たしてマイは私の名前を挙げるだろうか?

あいつの事だ、私の名前は出しそうにない。
別にだからといって困る事は何もない。教師の間で勝手に作られるデータに反映されるだけの話だ。
でも…

「もうあれ終わった?」「昨日ね」
「誰の名前言ったの」
聞きながらも、3人のなかに自分が入っていると確信している自分がいる。
「教えない」
「なんで」
「別にあんたに関係ないし」

その時、自分がどんな顔をしたのか覚えてない。が、きっと捨てられた子猫のように情けない顔をしていたに違いない。
そんな私の心情を知ってか知らずか

「あんたの名前言って欲しかったの?あんたの面談の時は私の名前出していいよ」

マイが誰の名前を出したのかは結局わからなかったが、からかわれているのがわかった。

私の独占欲を、下らない、とあざ笑っている…

悟った瞬間、顔に血が上る感じを自覚した。
恥ずかしい!お前は子供だと、友達を独占したがるお子ちゃまだと思われた…

「遠慮するよ」
自分でもバカだったとしか思えない強がりを吐き捨てて、その場から逃げ出した。
マイと対等に付き合っていると思い込んでいた自分が恥ずかしい!
彼女は大人だ。少なくとも自分のように下らない独占欲 などに頼らずに人間関係を円滑に、器用に泳いでいる。

それに比べて自分は…

それからの数日は自責の念にかられて過ごした。休み時間も会いに行かなかった。
私がマイの周りから消えたくらいでマイは何も変わらない。マイにとっては自分なんて…

いやだ。
自分はマイの一番でいたい。マイのなくてはならない一部でありたい!



好きなんだと思った。
マイの事が好きなんだと。


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