一生分の恋
自分の恋を自覚してからは、むしろ落ち着いた日々が流れていった。
無気力だった気分も幾分上向き加減になり、マイのために生きて行こうと勝手に思っていた。
相変わらず休み時間のクラス訪問は自粛した。こちらが一歩引く事で、相手の関心を引き付けよう、とありがちな駆け引きまでしてしまうほど、「恋する」事にハマってしまっていた。
しかしこのオーソドックスな手は奇跡的に効果を発揮して、3日に一度は向こうから会いに来てくれた。
同性だということは気にもしなかった。自分はボーイズラブ系のマンガ、小説を読みあさっていたせいか、同性愛というものに対する免疫がついていたのだ。マイも同じように免疫があるから、普通に落とせる、と確信していた。
例えば、友達同士のスキンシップの延長として、手を繋いでみる。
マイの手のひらは柔らかくて暖かい。
後ろから抱きしめてみる。天然でウェーブのかかった腰まである長い髪はふわふわといい香りがする。
ふざけたふりで耳元で囁いてみる。
手首の裏を優しくなでる。
細くてしなやかな腰を抱いてみる。
すべてを拒絶せずに受け入れているマイは、少なくとも私の事がキライではない。行ける。
そう思ってからは、以前のようにマイのクラスメートに嫉妬する事もない。
自分だけが彼女を抱きしめて、彼女の香りを胸いっぱいに吸い込み、彼女を守って行ける。
そんな日々が続いた秋の夕暮れ。
部活が終わり、帰宅の準備をしようと自分の教室に向かっていた途中、マイのクラスの前を通った。
時間に関わらず、マイの教室を覗き込むのは習慣になっている。
すると、窓辺に佇む彼女を見つけた。
彼女は美術部に所属しているが、実質的には帰宅部だった。母子家庭であるために、早く帰宅しなければならないと言っていたのだ。割とまじめに部活動に参加している自分とは、基本的に時間が会わず、中学に入ってからは一緒に帰った事はない。
「何してるの」
西日を浴びて真っ赤に染まるマイは、少し神秘的で近寄り難い雰囲気だ。
「別に」
いつものようにつれない返事。
そっと近づいて横に並んだ。
無気力だった気分も幾分上向き加減になり、マイのために生きて行こうと勝手に思っていた。
相変わらず休み時間のクラス訪問は自粛した。こちらが一歩引く事で、相手の関心を引き付けよう、とありがちな駆け引きまでしてしまうほど、「恋する」事にハマってしまっていた。
しかしこのオーソドックスな手は奇跡的に効果を発揮して、3日に一度は向こうから会いに来てくれた。
同性だということは気にもしなかった。自分はボーイズラブ系のマンガ、小説を読みあさっていたせいか、同性愛というものに対する免疫がついていたのだ。マイも同じように免疫があるから、普通に落とせる、と確信していた。
例えば、友達同士のスキンシップの延長として、手を繋いでみる。
マイの手のひらは柔らかくて暖かい。
後ろから抱きしめてみる。天然でウェーブのかかった腰まである長い髪はふわふわといい香りがする。
ふざけたふりで耳元で囁いてみる。
手首の裏を優しくなでる。
細くてしなやかな腰を抱いてみる。
すべてを拒絶せずに受け入れているマイは、少なくとも私の事がキライではない。行ける。
そう思ってからは、以前のようにマイのクラスメートに嫉妬する事もない。
自分だけが彼女を抱きしめて、彼女の香りを胸いっぱいに吸い込み、彼女を守って行ける。
そんな日々が続いた秋の夕暮れ。
部活が終わり、帰宅の準備をしようと自分の教室に向かっていた途中、マイのクラスの前を通った。
時間に関わらず、マイの教室を覗き込むのは習慣になっている。
すると、窓辺に佇む彼女を見つけた。
彼女は美術部に所属しているが、実質的には帰宅部だった。母子家庭であるために、早く帰宅しなければならないと言っていたのだ。割とまじめに部活動に参加している自分とは、基本的に時間が会わず、中学に入ってからは一緒に帰った事はない。
「何してるの」
西日を浴びて真っ赤に染まるマイは、少し神秘的で近寄り難い雰囲気だ。
「別に」
いつものようにつれない返事。
そっと近づいて横に並んだ。