聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
「おまえらなぞ……次に会ったときは塵にしてやる!!」

「はい。期待してますよ。でも、そういう台詞はたいてい、負け犬が吐くものですけどね」


最後の最後まで嫌味を投げつけて、ガブリエルはクスクス笑って手を振って見せた。


ある意味、コイツの方が自分より性悪だと思う。


アスタロスは屈辱にまみれた顔を伏せると、そのままくるりと背を向けた。


「さぁ、ボクたちも行きましょうかね。ミカちゃん、ヨハネ?」


促されるように、アスタロスとは逆の方向に歩きはじめる。

目の前に扉がある。


マリアが開いた地獄の扉。
その前に自分は冷たくなったマリアを抱いたまま立っていた。


このまま。
このままここから出て行っていいものか?


マリアがやり残したことが、ここにはまだあるのに?



「ここにもう用はないでしょう、ミカちゃん?」



ガブリエルが早くと自分を促した。


地獄の門が閉ざされれば、容易にここへは戻ってこられない。


それではマリアのしたかったことが一つ、出来なくなってしまう。
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