聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
ガブリエルは突き立てた注射器で何かを吸い出し始めた。


真っ黒な液体が徐々にその注射器の中へと吸い出されてくる。


ここでやっと、彼が何をしているのかが理解できた。


ガブリエルの応急処置は、マリアの体から『毒の一部』を『吸い出す』ことだったらしい。


理解したらしい自分に向けて、ガブリエルは「少し冷静になってきたみたいだね」と作業したまま告げた。


冷静になってきた?
何を言ってるんだ?
ずっと冷静にこの場を見守ってるではないか!


「じゃ、さっきから動いてるその右足はなんだろうねぇ……」


ちらりとガブリエルは自分の右足に視線だけを送った。


ヨハネもその言葉につられて右足に視線を向ける。


右足?
動いてる?


「……な!?」


言われるまで気がつかなった右足。
苛立ちを隠せないように細かなリズムを刻んでいた。


「気づかないなんて……ミハエル、あんた……」


何が言いたい、ヨハネ。


愚かだと笑うのか?



「真理矢のこと。溺愛しとるんやな……」



ヨハネの曇りのない瞳が自分を見据える。


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