聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき
うっすら桃色の髪は肩までかからないショートスタイル。

前髪は長く、ほぼ顔の半分を隠してしまっているのに、透けるように細くさらさらの髪からのぞく瞳は驚くほど力強い。

単眼鏡(モノクル)をした彼はじっとこちらを睨んでいる。

自分よりも小柄なのに、この威圧感は遥かにデカイウリエルを凌いでいる。


こんなヤツに出くわしたら、『自分のマリア』なら卒倒だな。



「緊急事態は理解していますよ、ミカエル。だから、申請書は私自身が作成、すでに通しておきました。その注射器をウリエルに渡してください。ウリエルはすぐに処理をお願いします」

淡々とした口調でラファエルは、ウリエルと自分に指図した。


黙ってウリエルに注射器を渡す。


面倒な申請手続きをしなくていいことには感謝せねばなるまいな。
こいつは自分以上にうるさいのだ「挨拶」「礼儀」「行儀作法」などに。


「申請、感謝する」

「『人間臭くなっている』あなたに、法務省をうろつかれるほうが問題ですから」


棘だらけな言い方が不快。
もう少し、マシな言い方を見つけられないのか、おまえ。


「あなたにそっくりそのままお返ししたいですよ、その言葉」


「もういい。分かった。とりあえず、それは頼む。時間がないので行かせてもらう。構わないな?」


ちらりと二人を見る。

ウリエルはチッと舌打ちし。
ラファエルは「どうぞ」と手にしていた分厚い本をパタンと閉じて見せた。


くるりと二人に背を向けて、天界のはずれの森へと向かうことにする。


時間はないのだ。
こんなところで、性質の悪い同僚どもにいちいちキレている場合ではない。







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